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日常のトピ

たまにどヘタ漫画

『お金の思い出』 石坂啓

 

熱血青春奮戦記。ビンボーの始まりは父親の事業の倒産だった―苦悩知らずのお嬢様のキャンパス・ライフはアルバイト暮らしへと一大転換。ウェイトレスに訪問販売、塾講師…艱難辛苦を乗り越えて、手塚プロのアシスタントからマンガ家デビューを果たして活躍するまでの面白おかしいけったいな日々が蘇る、自伝エッセー。まさに、赤貧笑うがごとし。(「BOOK」データベースより)

 

漫画家の石坂啓さんによる「お金にまつわるエッセイ集」です。20代という「最もスリリングかつダイナミックな年代」に起こった、お金にまつわる数々の出来事を、軽妙なエッセイに仕立て上げています。

 

本書を読んでつくづく感じたのが「石坂啓さんの人間としての強さ」です。数十人の従業員を抱えていた父親の会社が、親会社の冷たい仕打ちによって、あっさりと倒産したという「悪夢のような出来事」を冷静に振り返る石坂さんの文章を読んだとき、文字通り、鳥肌が立ちました。

 

恨み節を漏らすことなく、当時の「惨事」を淡々と振り返るその姿からは、「人間強度の異常なまでの高さ」をうかがい知ることができます。石坂さんの文章を読んでいると、私の中の「強い女性」の代表格である、作家の伊藤野枝の姿が頭に浮かんできます。昔も今も、「自分の気持ちに実直な人」というのは、とても魅力的です。人生、「衝突してなんぼ」でしょう。

 

「お金にはお金の領分で仕事をしてもらいたい。お金のあとをついていく人生なんて、ちょっと筋が違うんじゃないか」とあとがきにもあるように、お金というのは、「あくまでもお金」です。お金がお金の領分を超えて、人間の身体に異様に食い込んでいるために、様々な歪みが生じているのです。

 

もちろん、資本主義社会に生きている以上、お金はとても大事です。しかしながら、「お金を大事に思うこと」と「お金に振り回されること」は全く違います。お金に必死で食らいついていく人生よりも、お金と共にゆっくり歩む人生の方が遙かに豊かであることは確かです。

 

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