日常のトピ

たまにどヘタ漫画

『人斬り半次郎』 池波正太郎

 

「今に見ちょれ」。薩摩藩中でも「唐芋侍」と蔑まれる貧乏郷士の家に生れた中村半次郎は、だがその逆境に腐ることなく、いつの日かを期していた。秀抜な美男子で気がやさしい。示現流の剣は豪傑肌に強い。恵まれた資質のままに精力的に日を送っていた二十五歳のある日、半次郎は西郷吉之助と出遇う。時は幕末、惚れ込んだ男=西郷につき、半次郎は水を得た。京の町に“人斬り半次郎”の名が轟く。(「BOOK」データベースより)

 

中村半次郎の生涯を描いた小説です。「人斬り半次郎」として恐れられた中村半次郎の人となりを、池波正太郎さんの鮮やかな筆致で表しています。男女の別なく、多くの人間を虜にした中村半次郎の人間的魅力を堪能できる一冊です。

 

中村半次郎という人物を一言で表すと、「人生をフルスロットルで駆け抜けた人」です。目の前の事象に対して常に全力でぶつかり、その後のことは一切関知しないという、非常に刹那的な生き方をした人です。まさに、「一所懸命を体現した人」であると言えます。

 

本書の中で、中村半次郎に比肩するほどの存在感を放っているのが、西郷隆盛です。薩摩藩士だけではなく、全国の志士からも圧倒的な支持を集めた西郷は、文字通り「幕末のシンボル」でした。本書の中でも、西郷についての記述が随所に散りばめられています。その中でも、最も印象に残った箇所を引用します。

 

「人物も立派なのだが、何しろ、見るからに偉人の風貌をそなえているから、することなすこと、すべてに信頼をもたれる。もしも、西郷隆盛が、〔きりぎりす〕のようにやせた男であったら、西郷は、あれだけの仕事をなしとげられなかったであろうし、上野の山に銅像もたたなかったであろう。この点、大久保市蔵(利通)は大分に損をしているといえそうだ」

 

西郷は、その魅力的な容姿によって人々の目を強く惹きつけたからこそ、「不世出の人間的魅力」を存分に発揮することができたのです。西郷という「稀代の名俳優」に見出されたことが、中村半次郎が世に出るきっかけになり、戦に散るきっかけにもなりました。師である西郷と共に駆け抜けた中村半次郎の生涯は、今もなお激烈な輝きを放っています。

 

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